新鮮な魚介類を生や加熱が不十分な状態で食べて、激しい胃痛が起こった場合は、
食事をせずにできるだけ早くご相談ください
アニサキスについて
アニサキスは身近な魚介類の寄生虫で、生や過熱が不十分な状態で食べると感染して激しい胃の痛みを起こします。原因に心当たりがある場合には、すぐに胃カメラ検査可能な消化器内科を受診しましょう。胃カメラ検査では、胃の中のアニサキスを除去できますので、ほとんどの場合は痛みが速やかに解消します。 ただし、胃カメラ検査の7時間前に食事をしていると、アニサキスの発見が難しく、すべてを摘出できないこともあります。できるだけ緊急対応していますが、検査枠に空きがないなどで対応ができない可能性もありますので、まずはお電話でお問い合わせください。
アニサキスによって生じる症状
- 激しい腹痛
- みぞおちの強い痛み
- 激しい吐き気や嘔吐
- 腹部の張り
など
新鮮な魚介類を食べてこうした症状が生じた場合、アニサキス症の可能性があります。アニサキスは人間を宿主にできませんので、放置しても1週間程度で死滅します。ただし、かなり強い症状が出ますし、内視鏡でアニサキスを除去することで、痛みなどの症状はほとんどの場合、速やかに解消します。かなりまれですが、放置することで重症化してしまうことがありますので、アニサキス症が疑われる場合には早めにご相談ください。
アニサキスとは
寄生虫の1種で、幼生が海の魚介類に寄生し、最終宿主はイルカやクジラです。新鮮な魚介類を生か加熱が不十分な状態で食べると、生きたままのアニサキスが胃の中に入ります。アニサキスは人間を宿主にできませんが、胃の粘膜に深く食い込んで強い痛みを起こし、1週間程度で死滅します。
どんな魚介類にも寄生するとされていますが、感染原因で多いのはサケ、サバ、イカなどの身近な魚介類です。アニサキスは半透明の糸クズのような見た目で、長さが2～3㎝ありますので、注意深く観察すると肉眼でも発見が可能です。ただし、アニサキスは宿主の魚介類が死ぬと筋肉に移動してくるため、刺身などでは見えない位置に入り込んでいる場合があり、それを食べて感染することが多くなっています。
アニサキス症の発症
海の魚介類を生や加熱が不十分な状態で食べると、寄生していたアニサキスが生きたまま体内に入って、胃や腸の粘膜に身体を食い込ませます。食事後、数時間してから激しい痛みを起こします。
胃アニサキス症
アニサキスによる疾患のほとんどが、この胃アニサキス症です。食べてから数時間で症状を起こすことが多いのですが、十数時間後に症状が現れることもあります。激しい腹痛は強弱の波があり、吐き気・嘔吐をともなうこともあります。アレルギー反応として、発熱、じんましんなどの症状を起こすこともあります。
腸アニサキス症
食べてから半日から数日後に発症します。発症まで時間がかかるため、原因がなかなかわからないことがあります。発症はまれですが、悪化して腸閉塞や腸穿孔、腹膜炎を起こすこともありますので、心当たりのある腹痛や吐き気、嘔吐などがある場合には、早めに受診してください。
消化管外アニサキス症
発症はかなりまれです。アニサキスが消化管外に出てしまっていますので、部位によっては深刻な状態になる可能性があります。疑わしい症状がある場合には、できるだけ早く受診してください。
アニサキスアレルギー
アニサキスにアレルギーがあって、じんましんなどの症状を起こします。十分に加熱してアニサキスが死んでいても、アニサキスを完全に除去していても症状を起こします。呼吸困難や血圧低下など、アナフィラキシーショックを起こすこともあります。寄生の可能性がある魚介類を口にしないように心がけてください。
アニサキス症の検査
胃カメラ検査
アニサキスによる疾患のほとんどが胃アニサキス症です。胃アニサキス症の場合は、胃カメラ検査でアニサキスの有無を直接確かめることができますし、その場でアニサキスを除去できますので、速やかに症状が改善します。
なお、腸アニサキス症の発症頻度は約1%以下ですが、重症化することがありますので、疑わしい場合には大腸カメラ検査や腹部超音波検査などを行って確認しています。 当院では、熟練した内視鏡専門医が、患者様の苦痛を最小限にした胃カメラ検査や大腸カメラ検査を行っていますので、安心してご相談ください。
血清検査
血液を採取して、アニサキス抗体IgG・IgA検査を行います。胃アニサキス症以外が疑われる場合に行われます。
超音波(エコー)検査
食後7時間以上経過していないなどで胃カメラ検査では発見が難しい場合や、胃以外にアニサキスがいる可能性がある場合に有効です。
治療
胃アニサキス症
胃カメラ検査で直接アニサキスを確認し、内視鏡の先から鉗子を出して除去する治療も可能です。除去することでほとんどの場合は速やかに症状が改善します。観察と除去を含め10分程度です。
アニサキスアレルギー
軽度の場合は抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬による治療を行います。また、ステロイドを使用する場合もあります。アナフィラキシーショックを起こしている場合は、一刻も早くエピペンや点滴などによる治療が必要です。
腸アニサキス症
発生頻度は1%以下です。症状を改善する内服薬などの対症療法を行います。
消化管外アニサキス症
かなりまれですが、激しい胃痛や腹痛があります。寄生している部位によっては早急な治療が必要になりますので、早めに受診してください。
アニサキス症を予防するために
アニサキスは、70℃以上に加熱する、あるいは60℃以上で1分間以上加熱することで死滅します。表面だけでなく中心もこの温度にする必要がありますので、中までしっかり火を通してください。冷凍でも-20℃以下で24時間以上経過すると死滅します。お刺身やカルパッチョ、中がレアなたたきや炙りは、こうした冷凍処理をしたものを解凍してつくることで安全に食べることができます。
また、新鮮な魚の内臓は最もアニサキスの感染リスクが高いため、絶対に口にしないでください。酢漬けや塩漬けなどでもアニサキスは死滅しませんので、ご注意ください。
なお、アニサキスアレルギーがある場合には、アニサキスが寄生する可能性のある海の魚介類は火を通してあっても口にしない方が安全です。
