便秘

便秘について

便秘は食生活や運動不足など日常的な原因で生じやすいのですが、疾患の症状として現れていることがあります。また、慢性的に便秘があることで痔や大腸疾患発症リスクが上昇してしまいます。
特に市販薬や浣腸などに頼っている場合、悪化して効果が薄くなることがよくあります。腹痛をともなう、下痢と便秘を繰り返す、お腹が張って苦しい、慢性的な便秘があるなどの場合には、消化器内科を受診して疾患が隠れていないかを確認し、適切な治療を受けて解消させましょう。

便秘の種類

便秘の定義は、「本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされていて、排便のない日数などの基準はなく、残便感がある、強くいきまないと出ないといった状態も含まれます。
便秘は女性に多い症状とされていますが、男性でも便秘にお悩みの方が少なくありません。高齢になると腸の機能が低下するため、便秘のお悩みを持つ方は加齢によって増加します。

さまざまな原因で便秘は生じますが、原因によって大きく4種類に分けられます。

機能性便秘

蠕動運動など、大腸の働きの異常によって起こる便秘です。消化管の機能は自律神経がコントロールしていますので、ストレスなどの影響も大きく受けます。機能性便秘は、弛緩性・痙攣性・直腸性の3種類に分けることができます。

弛緩性便秘

消化管を動かす蠕動運動が低下して起こる便秘です。蠕動運動を起こしている筋肉が弛緩して動きが弱くなり、便が停滞して便秘になっています。加齢による筋肉の衰えや生活習慣によって起こります。

痙攣性便秘

大腸の蠕動運動に連続性がなくなって乱れることで、便の通過に時間がかかるようになって生じる便秘です。ストレスなどによって腸の機能をコントロールしている自律神経のバランスが乱れて生じると考えられています。

直腸性便秘

直腸部分で便が停滞して大きなかたまりになっていて、排便困難が生じている状態です。便意を我慢してしまうことが多いと神経の感度が鈍くなり、直腸まで便が来ても便意が起こらなくなって直腸性便秘を生じます。シャワートイレで肛門内まで洗う習慣があると直腸性便秘になりやすい傾向があります。

器質性便秘

原因疾患があって便の通過が妨げられて起こっている便秘です。大腸がん、腹部手術後の癒着、炎症性腸疾患、そして女性の場合は直腸瘤が原因になって生じていることもあります。原因疾患の早急な治療が必要です。

症候性便秘

疾患の症状として起こっている便秘です。消化器疾患以外では、甲状腺疾患や糖尿病の合併症で起こることがあります。

薬剤性便秘

抗コリン薬、咳止め、抗うつ薬は腸の働きを鈍くする副作用を起こすことがありますので、喘息や頻尿、パーキンソン病などで治療薬を服用している場合、薬剤性便秘が生じることがあります。

便秘の症状で注意したい消化器疾患

大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、腸閉塞は、便秘の症状を起こすことがあります。 大腸がんが下行結腸やS状結腸に生じた場合、比較的早い時期に便秘症状を起こすことがあります。大腸がんは早期発見できれば日常に支障を及ぼさない楽な治療で完治が期待できますので、急に便秘するようになったという場合は早めに消化器内科を受診してください。
また、便秘は痔や大腸疾患の発症リスクを高めますが、大腸がんリスクも上昇させてしまうことがわかっています。排便の頻度と結腸直腸がんの関連について調べた大規模な調査でも、リスクが高くなることが報告されています。便秘は適切な治療で改善できますので、便秘になりやすい場合には消化器内科の受診をおすすめします。

便秘の検査・治療方法

問診で症状や既往症、服用している薬、ライフスタイルなどについて詳しくうかがいます。血液検査、大腸カメラ検査、腹部エコー検査などから必要な検査を行い、総合的に判断していきます。
大腸カメラ検査では、大腸粘膜全域を詳細に観察できますので、微細な病変も発見可能になり、形状の問題なども確認できます。また、組織を採取して病理検査をして確定診断もできます。
症候性便秘の場合は、こうした検査で原因疾患を確かめることで、適切な治療が可能になります。

便秘の治療は、薬物療法に加えて、生活習慣の改善も必要です。食事や運動だけでなく、正しい排便習慣を身に付けることで再発の予防にもつながります。ちょっとした工夫や見直しでも効果が見込める場合がありますので、無理のない範囲で続けていきましょう。
薬物療法では、腸内の水分量を増加させる緩下剤、便の水分量を増加させる浸潤性下剤、刺激性下剤、漢方薬などがあります。最近は新しい作用機序のものも登場しています。市販薬が効かなくなってしまったケースでも原因を見極めて適切な薬物療法を行うことで改善が可能ですので、便秘でお悩みがありましたらお気軽にご相談ください。

便秘が続くときは早めにご相談を

いきんでも少ししか出ない、1週間以上すっきりしない状態が続くといった場合には、早めにご相談ください。日常的な症状だからと我慢してしまうと、悪化して日常生活に支障を生じる場合もあります。適切な治療でコントロールできるようになれば、不安や制限なく快適な日常生活を送ることができます。疾患が隠れている可能性もありますので、便秘がある場合は、お気軽にいらしてください。

TOPへ